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「愛季さ… もしかしてキスも、まだ?」
「うぁぁああ… ん、ぅ、う」
涙をこしこしと擦ってやると幾分かは落ち着いたのか、愛季は首を縦に振った。
「うわ~、ホントに何っにも知らないで此処に来ちゃった訳か…」
「…?」
涙の溜まった目を開き、愛季はしゃくりあげながら明を見つめる。
明は傍らのティッシュで愛季の顔を拭き、うーんと何やら思案し始めた。
「何から説明したげようか…」
眉を垂れて頭を掻く明。
暫く考え込み、やがて漸く口を開いた。
「あのさ、此処… 辞めていく人が多いの知ってる?」
「はい… 勉強、ノイローゼ、でっ」
やっと冷静さを取り戻したのか、愛季は少しばかり照れくさそうな表情で答えた。
「それ、正確には違うんだ。いや、それもあるんだけどさ」
明が言うには、本当に勉強ノイローゼで学園を抜ける生徒はほんの1割程度らしい。
「え、じゃあ 他の9割の人達は…」
「此処の事を知って、逃げて行くんだ。随分 噂になったし、大概の奴らはさ… 知ってる筈、なんだけど」
困ったように苦笑いを浮かべ、明は愛季の上から退いた。
愛季は上体を起こし、2人でベッドに座る形となる。
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