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「香尋…本気か」
低く重く。
身にのしかかるような空気を打ち破ったのは、意外にも八代の声だった。
「…本気で、んな事言ってんのか」
本当に心からの笑顔も。
初めて見せた泣き顔も。
愛らしかった怒り顔も。
はにかむような照笑も。
全て。
「俺達の前から、消えるつもりか」
無くなって、しまうのかと。
「…あのね」
小さく、愛季が口を開いた。
最後の言葉になるのかと。
司にも邪魔されず。
声は、空気を震わせる。
「んな訳ないでしょ?」
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