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確かに物凄く大人気なくはあるが、不思議と愛季は嫌ではなかった。
静や陽や冷らの堅い腕とは違う柔らかい腕に抱かれる感覚も、きめ細やかな肌が頬に擦られるのも。
幸せ、と、似た感覚が、其処には有った。
「花園…学園、長」
「煙華さんって呼んで。学園長って言ってもお爺様の学園を引き継いだだけの名ばかりだもの」
「じゃあ、煙華さん」
ふわり、愛季は照れくさそうに微笑んだ。
「抱きついても、良いですか?」
愛季の言葉に一瞬目を見開き、煙華は大輪の花のように微笑んだ。
「何言ってるの、当たり前じゃなーいっ!! もーぅ、引っ込み思案なトコも可愛い可愛いっ!!!」
甘えてみたい、母の様なこの人に。
愛季がそう思ったかは定かではないが、煙華と抱き合う愛季が幸せそうに見えたのは恐らく間違いない。
1つ溜め息を付いて、静はそう思った。
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