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「…もしかして、葵さんって」
「正解。高所恐怖症」
ぴらりと1枚の紙を差し出し、玄が言った。
「…診断書まで」
「本来、診断書必要。葵、本物」
受け取った紙は葵の高所恐怖症診断書で、成程確かに詳細が記載されている。
それを玄に返しながら、愛季は葵をちらりと見た。
赤い髪をだらり垂らしながら四つん這いになり、くわえた飴は今にも落ちそうだ。
「あぁもう…大丈夫ですか?」
見かねて近寄る愛季を、葵は猛獣を思わせる瞳で射抜いた。
「近寄るな…!!」
有無を言わせぬその声色に、愛季は一瞬びくりと竦む。
「アイツは馬鹿だから仕方ないよ、愛季。こっちでぼくらと遊ぼー」
「で、でも」
「無視、最良」
都や玄にまで手を引かれ、愛季は運転手に何やら指示を出していた煙華に近付く。
…まるで1人孤独の様に其処に残った葵を見ながら。
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