自由行動

7/11

3008人が本棚に入れています
本棚に追加
/272ページ
「アイツ、徳川でしょ? 豊臣と織田にとっちゃあんまし良いイメージ無いんだよねぇ」 数日前に習った歴史の授業を思い起こし、愛季は視線を泳がせる。 豊臣は織田の家臣で、織田を殺した明智を豊臣が。 そして、明智の天下を奪ったのが徳川。 …アレ? 「…あの、お2人が恨むべきなのは寧ろ明智光秀の一族、では」 「あー、表面上はそうなんだけど。明智は討ち取ったしぃ、ぼくらの曾祖父さんの時代で仲直り会議が開かれたんだぁ」 聞く話では、その会議で明智、織田、豊臣の子孫は仲直りをしたらしい。 「けど、それに徳川だけ参加しなかったんだよねぇ」 「徳川、憎悪。我、都、共同戦線」 …愛季はますます眉間に皺を寄せ、うーんと悩み込んだ。 つまりは、歴史上に出来、曾祖父の時代に埋まりかけた溝が、徳川の欠席のせいで一層深くなってしまった、と。 確かに憎むべき事なのだろうが、やはり愛季には理解し難かった。 本人ならばまだしも、それは何十年何百年と前の事だ。 今、この時代で、この3人(実際には2人と1人)が歪み合う必要はあるのだろうか。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3008人が本棚に入れています
本棚に追加