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「…別にぼくと玄は構わないけどさー」
アイツがね。
そう目で言った都の後ろに、ぬっと影が現れる。
「…オレは、ぜってぇ此奴等なんかと仲良くしねぇからな…?」
何とか慣れてきたらしい葵が、低く唸るように言う。
「なら天下統一は無しです」
「この、ガキ…!!」
風を切って愛季の頬に向かった拳は、虚しくも空気を裂くのみ。
しゃがみ込んで拳を避けた愛季は素早く葵の足を払い、向こう脛を蹴り飛ばす。
ぐらり傾いた身体は、派手な音を立てて倒れ込んだ。
「力ずくですか? 受けて立ちますけど」
にっこりと笑いながら、愛季は葵の顔を覗き込む。
「っくそ…」
「あぁハイハイ愛季くんそこまで。ホラ、目的地に着いたから!」
窓を指して言う煙華につられ、愛季は窓の外に広がる景色を見る。
「わぁ…!!」
「凄いでしょ? 1年中咲き誇るラベンダー畑なんですって」
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