3008人が本棚に入れています
本棚に追加
/272ページ
「科学も進歩したよねぇ。ちょっと前まで鉄の塊が空を飛ぶのも無理だったのに」
「それは結構前の話なような…」
「驚愕。綺麗」
「そうですね、とっても綺麗です」
両側から話し掛けられても、愛季は嫌な顔ひとつせずに答える。
まるで聖徳太子のようである。
「でもホントに凄いです。あんな向こうまで一面薄紫で」
愛季は窓いっぱいのラベンダーを指でなぞりながら、にっこりと笑った。
と、突然風が吹き込んできた。
「…学園長、何なさってるんですか」
「ん? 縄梯子出してるの」
「…もしかして」
「いやぁね愛季くん、こんな素敵な景色は見るだけじゃつまらないわよ?」
バサッと下ろされた縄梯子は物凄いスピードで落下し、さながらバンジージャンプのようにびょんと跳ねた。
「さっ、降りるわよー!!」
煙華の行動は普通じゃない。
漸く理解した愛季であった。
最初のコメントを投稿しよう!