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酪農?
愛季は強調されたその単語に小首を傾げ、自分の語彙に思考を巡らせる。
酪農…
牛…
ミルク…
「…おいゴルァ」
ミシミシ、と煙華の肩が鳴る。
煙華の肩を掴み、煙華の後ろに佇む八代…
その姿まさに、修羅。
「まさかお前ェ、香尋でミョーな事考えてんじゃねェだろうな…?」
「あら何の事かしら? ってかアンタが変な想像してんでしょうが気持ち悪いわねぇ」
最早折れそうな肩をもろともせず、煙華はニタニタと嫌みな笑みを浮かべて八代に嫌みを垂れる。
八代は益々顔の闇を暗く深くし、修羅どころかきゃーパパあの人こわーいコラコラ見ちゃいけません、な顔となっていた。
「おい… 歴史トリオ」
「だっからその呼び方止めろっつったろがクソが」
「黙れクソ餓鬼。テメェ等は香尋2ィ(藍梨)連れて旅館戻ってろ」
八代は有無を言わせずギロリと4人を睨み付け、愛季を荷物のごとく抱え上げた。
そして。
ピポパ。
「あぁ、俺だ。回せ」
短くそうどこかに電話し、ざくざくと新雪を汚しながら皆から離れる。
文句を垂れる皆を一瞥した後…
ブォゥロロロロロロロ!
…現れた黒塗り高級車に乗り込み、視界から消えた。
もうこの学園にまともな人や生活は期待出来ないな。
流れる景色を見つめ、愛季は遠い目でそう考えるのだった。
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