青春争奪

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「その点なら大丈夫ですよ。だって、僕はずっと」 愛季がそこまで言うか否か。 突然、大柄な男達が入って来た。 乱暴に開け放たれた扉。 黒いスーツは所々赤黒く黒ずんでいて… (…返り血…!?) 真っ先に、喧嘩慣れした陽が息を飲んだ。 そんな男達は愛季から5人を引き離し、周りに跪く。 「愛季様。我が主がお待ちです」 危ないと分かっているのに、助けなくてはと思うのに… 4兄弟と八代はただ見つめることしか出来なかった。 …まるで人を殺してきたような冷たい目をした男達。 しかしそれを見る愛季の目は… 男達のそれより、何倍も何倍も冷たかったのだから。 「その話は断った筈だけど」 「愛季様。我が主は貴方の為だけに、奥方様とも縁をお切りになられたのですよ」 頭の回転が早い静が、この会話から推測するに。 黒服男達は誰かの召使いで、その主は愛季に惚れ込んでいる様子。 そして、奥方様という言葉から、その主も男である事が伺える。 つまり、既に愛季は男に求婚されていたという訳だ。 「やだ。僕、ああいうお金持ちな人大嫌いなんだもん」 さっきまでの窶れた表情はどこへやら。 まるで我が侭な子供のように、愛季は頬を膨らませた。 いつの間にか頬には血色が戻り、どうも興奮しているらしい。 「帰ってあの人に伝えてくれない? 僕は貴方が大ッ嫌いです、死んでも貴方の物にはなりませんって」 「…そうですか」 男は跪いていた体を上げ、立ち上がった。 じり、と距離を詰められると、ただでさえ小柄な愛季が更に小さく見える。 「何? おじさん達、力ずくで僕を連れて帰るつもりなの?」
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