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「聞こえは悪いですが、そうなります。貴方を主の元に連れて行かないと、文字通り私達の首が飛ぶ」
とんとん、と太い指で喉仏を叩く男。
どうやら主とはどこまでも最低な人物のようだ。
「ふぅん…」
愛季は目線を落とし、やがて顔を上げて挑発的に微笑んだ。
「出来ると思うなら、やってみればぁ?」
ハラハラしながら見つめる5人。
強靭な男達が愛季を連れて行くのなど、赤子の手を捻るような事だろう。
そうなってしまえば、愛季がどうなるかなど容易に想像がつく。
「かかってきなよ。おじさん達がみんなボコボコに痛めつけられたら、流石のあの人も諦めるでしょう?」
「っ愛季!」
見ていられなくなったのか、明が割って入る。
「え。どうしました?」
変わらぬ優しい笑みに安心を感じながら、明は言う。
「適うわけ… ないだろ」
「いえ、それは」
愛季が言い終わらない内に、愛季の細い手首が掴まれた。
みしりと音を立てそうな程、掴まれた周辺の肌が白くなる程。
「…おじさん、小学校で習わなかった?」
不機嫌そうに愛季はその腕を見て、クルリと体を回転させた。
掴まれた手首を軸に、男の腕に逆立ちをしている訳だ。
軽いからこそ出来る技。
陽はポカンと口を開けた。
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