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「愛季<マナキ>君も可哀想に…」
「まだあんなに小さいのにねぇ」
「けれど、金はかなり持ってるらしい」
「あぁ、確か…未だ13歳なのに、癌に効く薬を開発した天才だとか」
「いや、小学2年生の頃にはもう、ハーバードを首席で合格出来る程の知識があったと聞いたぞ」
「うわ。居るんだねそんな奴」
「御両親も、さぞかし自慢の息子だったろうに…」
「それがさぁ、そーぉでもなかったらしいのよぉ。ほら、天才な分恨みも酷くって、嫌がらせとか…」
「今回の放火も、もしかしたら…」
「しっ! 聞こえるわよ!」
その細い体に喪服を纏い、親類の戯れ言を聞き流して。
美少年… 愛季は、2つの亡骸の前で真っ直ぐに立っていた。
焼けた骸を何とか棺におさめ、今し方漸く葬儀が終わった所。
愛季は棺をそっと撫でると、土に埋められていく両親を腫れた目で見つめる。
涙は膜すら張っていない。
(金儲けの事しか考えていないアイツ等の前で、泣いたりなんかするもんか)
唇を噛み締め、愛季は立っていた。
蕭々と降る雨の中で、愛季は。
嘲笑混じりの戯れ言の中で、愛季は。
ただただ、目の前を見据えて立っていた。
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