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「かかってこないの? なぁんだ、つまんないの。前に来た人達は、両腕両足折られるまで立ち向かってきたのになぁ…?」
「…っ! おい、退くぞ!」
ひとりの男の言葉で、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う男達。
倒れた男を引きずって、我先にと扉に突進する。
最後のひとりが慌ただしく部屋を出たのを確認してから、愛季は溜め息をついた。
「お騒がせして、すみませんでした」
ぺこり。
5人に向かって頭を下げ、愛季は言う。
「い… 今の奴らは?」
目の前で起こった出来事を俄に信じられぬまま、陽が呟くように問うた。
困った様に微笑みながら、愛季はゆっくりと口を開く。
話によると、先程の男達は、愛季に惚れ込んだ金持ちの使用人らしい。
日々、愛季を主の元に連れて行こうと奮闘しに来ると言うのだ。
「今の奴らは、蹴り飛ばした筋肉の感じはいちばん堅かったです。多分、使用人でも上らへんの奴らだと思いますけど…」
全く、迷惑な話ですよねぇ。
愛季はやれやれと首を振る。
そんな様子を見ていた5人の脳裏に、先の言葉の続きが浮かんだ。
だって、僕はずっと。
そんな奴らを、相手にしてきたのだから?
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