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ただ、1つだけ。
愛季の手や、膝。
打ち身、擦り傷、青あざ…
それらが出来る頻度を除いて、だが。
昨日までは絆創膏といった小さな怪我だったのが包帯になった事で、ついには明もその端正な顔を歪めた。
「どうしたの、愛季」
明は問う。
寄せられた眉には心配が滲み、愛季は軽く笑って答えた。
「転んだだけですよ。ご心配なく」
隠すように手を体の後ろに回す愛季。
「…本当に? 最近、愛季 怪我多いよね?」
「大丈夫です! じゃあ僕 行く所あるので!」
愛季はそう言い、明から離れて廊下を駆けて行った。
先程隠した右手に、グシャグシャになった紙を握り締めて。
「八代先生」
「香尋か。今日はどうした?」
「膝が変な色に腫れてきました」
そう言ってズボンの裾を上げた愛季。
確かに細く白い脚には痛々しい打ち身の痕があり、青紫に変色した其処は目で見て分かる程に腫れている。
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