3008人が本棚に入れています
本棚に追加
やがて教室に着き、始業のチャイムと同時に席に着く愛季。
「愛季、本当にどうしたの? いつもなら5分前には座ってるじゃん」
「絆創膏を… 貰いに行ってたんです」
HRも終わり、1限目が始まる。
皆は各々の机から、教科書を取り出してそれを開く。
勿論愛季も教科書を出そうと机の中を片手で探り… そして、刹那。
「…っ痛」
白い手を、紅が彩った。
「愛季!?」
声に反応して飛んできた明に、それらを隠しきれる筈もなく。
愛季の机に仕込まれたそれは、直ぐに発見された。
「…剃刀ぃ? あははは、こんな馬鹿な事、誰がやったのかなぁ」
いつもはのらりくらりと柔らかい瞳が、眇められる。
真剣な表情で、声で、明は続けた。
「明さん」
「なぁに? みぃんな… ボクの声、聞こえないの?」
愛季の声も届かない。
所謂…
「これを仕込んだのは誰かって聞いてるだけなんだけどな…!?」
ブチギレ。
ばん、と大きな音を立てて机に叩き付けられた剃刀は、明の掌に食い込んでそれを容易く切り裂いた。
じわり広がる赤い水溜まりに、愛季が小さく短く息を吐く。
最初のコメントを投稿しよう!