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「鬱陶しいんですよ、そういうの」
怒り、憤りなどと。
そんな生温い言葉では表しきれない。
表しきれる筈が無い。
その、言葉は。
「愛季…?」
明を傷付けるに値する、確かな拒絶を含んでいたのだから。
「何だよアイツ」
「春日さんに謝れよ」
「何偉そうにしてんだよ」
そんな事を言いながら、クラスメートが愛季ににじり寄る。
ボコッッッ…
突如として、愛季の近くにあったロッカーが凹んだ。
ステンレス製のそれは比較的 簡単に凹むとはいえ、凹み方がおかしい。
ぼっこりと、拳型に穴が開くように凹んでいるのだ。
埃が舞う中、愛季が拳を構えているのが見える。
「そういうのが鬱陶しいんですよ」
愛季がロッカーを殴りつけた。
その事実は一瞬でクラスメートに伝わり、にじり寄っていたクラスメートの歩みがはたと止まる。
「愛季… 何やってるの、手だって切れてるのに危な「煩い」
愛季は明の言葉を遮り、スタスタとドアに向かって歩いていった。
そのまま、1度も振り返る事無く…
愛季は、見えなくなった。
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