徒然脅迫

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カサリ。 授業中で静まり返った廊下に、小さな音が響く。 (授業サボるなんて、初めてだなぁ) そんな事をぼんやり考えながら、愛季は保健室に居る時からずっと手に持っていた紙を開き、それにさらりと目を通した。 今朝いつも通りに登校したら、机に入れてあった物である。 自分が今置かれている状況を鑑みて、今の今まで開いていなかったものだ。 今は周りに人が居ないし、これ幸いと愛季はその紙を開いた。 最後の行まで読み終え、深く溜め息をつく愛季。 「もう… しつっこいよなぁ、あの人も!」 既にグシャグシャになった紙を細かく八つ裂いて、廊下のゴミ箱に捨てる愛季。 「今時古すぎでしょ」 愛季は自嘲気味に笑い、窓から外を見つめて呟いた。 憎々しい程、蒼い空。 「手紙で脅しなんて、さ」 中高生の苛めや嫌がらせの類には高価すぎる筈の、その紙。 差出人の名前は勿論無いが、愛季にはその相手がよく分かっていた。
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