奪還合戦

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山茶花が咲き誇る道を走る愛季。 朝の9時過ぎと中途半端な今の時間、町外れの裏道は無人もいい所だ。 100mは12秒フラット、所謂俊足の愛季。 程なくして、恐らくは手紙の出し主であろう男の屋敷に辿り着いた。 見渡す限りの塀。 瓦の屋根は今にも崩れそうで尚、どっしりとそこに存在している。 「相変わらず… だっさい造り」 乱れぬ息で嘲るように笑い、愛季はインターホンを押す。 ピンコローン。 全体的に古臭い造りの屋敷には似合わない機械音の後、何も言わずに扉が開く。 「うっわ… 客人の応対もしないわけ?」 少し頬を膨らませながら、愛季は開いた扉を見つめる。 「…さて」 恐らく、自分が入れば閉まるであろう硬くて重そうな木の扉。 「行くか」 その扉をくぐりながら、愛季は1度だけ振り返った。 愛季が思った通り 軋む音を立てながら、ゆっくりと扉が閉まっていく。 扉が閉まる寸前、愛季は小さく呟いた。 「…消えちゃえ」
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