奪還合戦

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「名前は?」 「時雨<シグレ>です」 「この屋敷で働き始めたのはいつから?」 「ずっと、前からですね。確か… 今年で6年になります」 背伸びをする愛季から傘を受け取り、時雨は自分達の上に差す。 激しさを増した雨が、傘に当たってバタバタと音を立てた。 「恋人は?」 「いません」 「どうして此処で働いてるの?」 「貴方は何でも聞きたがるのですね」 中途半端に伸びた前髪の奥で、優しげな瞳が細くなった。 「うん、だって僕はコドモだから」 嬉しそうに、愛季も笑う。 雨に濡れた髪が揺れ、今の愛季はまるで雨の中で燥ぐ妖精の様だった。 「…主が惹かれるのも分かりますね」 小さく零した時雨の声は、更に強さを増した雨音に掻き消される。
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