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そんな所に愛季をぶち込むなんて。
まるで、光の差さない牢獄に入れるようなものではないか。
周りにいる親類達はは皆がそう愛季に同情するも、表立って助けようとはしない。
それは当然の事であった。
親類達にとって愛季は親戚である前にひとりの人間。
何もかもが完璧な愛季を、恨まない者などここには存在していなかったのだから。
しかし愛季は助けを求めるような表情を出さなかったし… 寧ろ、その状況を楽しんでいる様だった。
「あの学園は学費も安いですからね。分かりました」
編入試験までパス出来るのなら、これほど良い話はない。
愛季はいい加減このねちっこい視線から解放されたかったし、何より両親が死んでも遺産の事しか気にしない親類が憎くてならなかった。
早く早く、1秒でも早く。
愛季はここから離れたかったのだ。
愛季が国から貰った研究費用や報酬は殆ど絞り取られてしまったし、今の愛季は無一文に近い。
そんな自分が疎まれているのは、火を見るより明らかだと愛季は思う。
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