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「あの人はどこ?」
「奥の間にいらっしゃいます。その前に、着替えと手当てをして頂きますよ」
「めんどくさぁい」
文句を言いながらも、自分の立場を見極めている愛季。
自分が何か相手の意にそぐわぬ行動をすれば、自分の周りが危険だ。
大人しく、時雨に連れられるままに別室に入っていった。
…その頃、山茶花学園では。
「…愛季、そんな事になってたのかよ」
破られた手紙を悔しそうに見つめ、呟いたのは陽。
手紙は切れ目にテープが貼ってあり、どうやらあの後明がそれをしたらしい。
「この手紙の送り主は恐らく… 2丁目にある和風屋敷の主でしょうか。門前に掲げられた家紋がこの紙にも印されてますし、先日の男達も主などと言っていましたから」
冷静に判断したのは静。
「ま、そうでなくても。この辺で屋敷とか呼べる家なんてアソコぐらいだしね~」
静かに怒りを燃やすのは明。
「あの家は確か… 国内でも指折りのやり手輸入会社の社長宅だったな」
PCを使い、情報を集めるのは冷。
「ま、警察に知らせた所で… 金で黙るのは目に見えてやがる」
タバコを吹かし、静かに告げるのは八代。
各々静かにソファに腰掛けてはいるが、目には確かな怒りの炎が見える。
未だ逢って間もない愛季だが、彼の優しさや可愛さ、強さ、健気さは嫌という程知っている。
だからこそ、5人は怒っていた。
そんな愛季を攫ったなどと…
ただ怒りだけが満ちるその空間には、雨が窓を叩く音だけが響いていた。
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