奪還合戦

8/12
前へ
/272ページ
次へ
「あぁ、愛季君。良く来たね」 「死ね」 仰々しい部屋に入るや否や、愛季は中に座る男を睨み付けた。 「なっ…「ばーか、デブ、大ッ嫌い!!」 つかつかと男に歩み寄り、愛季は着物を出来るだけ捲って、その細い脚で男を思い切り蹴り飛ばした。 太った男の体は大して飛ばず、どさりと倒れるだけに留まる。 「もう二度と僕と、僕の周りの人達に関わらないで」 床に転がる男に冷たく言い放ち、踵を返して立ち去ろうとする愛季。 が。 いきなり背中にタックルされ、俯せに倒れ込んだ。 「いっ… つ」 「ははははは… 放す、もんか」 愛季の腰に手を回し、どもる男。 薄く紅潮した頬と浮かぶ汗は、かなりの興奮を表している。 流石の愛季でも、後ろ手の状態では抵抗の術がない。 「き、君のために私は妻と別れたんだ。 君が手に入らなければ、私は生きる意味が無いんだよ!!」 「じゃあ、そのまま死んじまえ!!」 背中を思い切り反らし、男の頭に頭突きを喰らわす愛季。 ごつりと鈍い音がして、男は顎を押されてもんどり打った。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3008人が本棚に入れています
本棚に追加