奪還合戦

9/12
前へ
/272ページ
次へ
「生きる意味が無いような奴に、僕を手に入れる資格は無い!!」 愛季は男の下から抜け出し、乱れたおかげで走りやすくなった着物を掻き抱き、全速力で走り出した。 「まっ… 待て!! 待ってくれぇ!!」 後ろから男が追いかけてくるが、追い付く訳もなく。 あっという間に、愛季は庭に飛び出した。 「…あ、ぁ…」 …両親の命を奪ったあの日。 あの日も嵐が、あぁ、轟く雷が吹き荒れる風が叫ぶ大地が。 肉が焼けた匂いと死の香り、愛季は自分でも知らなかった。 …嵐が、愛季のトラウマとなってしまったことを。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3008人が本棚に入れています
本棚に追加