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「…あの、本当にすみませんでした… 助けて頂いてしまって」
「別にそれは良い。俺ァンなこたァ気にしてねェからな」
しゅんと首部を垂れる愛季に、八代がぶっきらぼうに言った。
「ただ、お前… 何でひとりであそこに行こうなんざ考えた? あのままだったら、今頃どうなってんだか想像出来るか?」
「…っ」
「八代っち、言い過ぎ。けどね愛季、ボクら本当に心配したんだよ。教室でだっていきなり豹変しちゃったし」
明はぐっと愛季に顔を近付け、腰を屈めて丸い瞳を下から覗き込んだ。
雨で冷え切った体を毛布に包み、愛季は今ベッドに横たわっている。
怒りを露わにする兄弟と八代に、愛季はおずおずと1枚の紙を差し出した。
その紙にさらりと目を通した後、冷は僅かに眉を寄せて隣の静に手渡した。
「脅迫状… ですね」
静から明に。
「もー… 優しすぎるんだよ、愛季は!」
明から陽に。
「…ったく、ちょっとくらいオレらを頼れよなー。そりゃまぁ、こないだは何も出来なかったけどさ」
陽から八代に。
「…クソ餓鬼」
八代から、また冷に。
「心配したぞ」
静、明、陽、八代、冷。
5人それぞれが、今にも泣きそうな愛季に言葉をかける。
「今度は頼るんだよぉ~」
剽軽な笑みを浮かべながら、愛季の頭に手を置く明。
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