花咲物語

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「それじゃ、荷物を纏めておいで。事情を話して、今日から寮に入れるように手配してもらったから」 「必要ありません。僕の物なんて、もう何も残ってないですから」 突如として、愛季の家に放たれた炎。 それは、愛季から全てを奪っていった。 愛季の服や、宝物はもちろん。 両親の、命まで。 現場から見つかったのは小さな100円ライターだけ。 強く太い雨が降っていたのにも関わらず、まるで家全体が一気に燃え上がったかのように無くなっていた。 口を揃えて学者は言った。 前例が無い。 こんな事は有り得ない。 それでも愛季は気丈にも笑って見せた。 「それでもこれが現実です」と。 「服は叔父さん達が下さったのがあるから大丈夫です。充分やっていけますよ」 「そうかい。それじゃ、行こうか」 愛季の叔父は車に乗り込み、愛季を連れて西へ向かった。 丁度 今頃は山茶花の花が咲き乱れているであろう… 山茶花学園へ。 あぁ 苦しきかな 美少年 誰もが自分の敵だとて 誰もに嫌われたとしても どうか 絶望しないよう 束の間の逃避に気を取られ この先に待つ 苦しみへ 足を 踏み入れる事無かれ…
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