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「…なぁ、それはそうとさ、何で愛季はあん時動けなくなった訳?」
漸く愛季が泣き止んだのを見て安心したのか、陽が軽く切り出した。
陽のいうあん時とは、愛季が雷を見たまま動かなくなった時の事だ。
「あァ… 一種のトラウマだろ」
2本目の煙草に火を点けながら、気怠そうに八代が答える。
静は未だ苛立たしげに八代を見ており、冷は2人の間に立って両側からの威圧感を感じていた。
「大方、両親の死に様が… 雷… っつか、嵐か。嵐を切欠にフラッシュバックしたんだろ」
その言葉に、びくりと肩を震わせる愛季。
「八代っち!」
「…良いんです明さん。寧ろ、はっきり言って下さって良かった」
悲しそうな笑顔のまま、愛季が言った。
「言われてみれば… 確かにあの時、僕は両親を… その、思い出していましたし」
あまりに健気な12歳。
悲しくて、寂しくて。
やるせないに違いない気持ちをちっとも出さずに、必死に生きる愛季…
「そっか、トラウマか。これからは気を付けますね」
そんな健気な愛季の姿に、5人は黙り込んでしまった。
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