精神外傷

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「だって… 気になったんですよ。さっき、そういえば先生の名前 知らないなぁって」 「チッ… 仕方ねぇな、1回しか言わねぇからよく聞けよ、聞いたら寝ろ」 深く煙草を吸い込み、八代は愛季に向き直った。 驚く程に優しい目に、思わず目を奪われる愛季。 「龍夜叉<タツヤシャ>、だ」 「龍夜叉… 珍しい名前ですね。それに凄く立派な、強そうな…」 「まぁな」 随分短くなった煙草を灰皿に押し込み、八代は愛季のベッドに近寄った。 「ホラ、答えたろ。早く寝ろ」 「はぁい」 布団を上げ、愛季は目を閉じる。 ゆっくりと目を細め、愛季は呟いた。 「お休みなさい… 龍夜叉先生」 「!」 八代が答えようとした時には、愛季は静かに寝息を立てていた。 「…ったく」 八代はやれやれと笑って、愛季の額に唇を落とした。 「俺の名前を教えたのは、お前が初めてなんだからな」 責任、取れよ? あぁ 愛しきかな美少年 無意識に安らぎを振りまき その身は 地獄に堕ちりけり 美少年 愛季 どうか この手を掴むよう…
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