女博士『リョクレン』

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「お待たせしました!」  裏返った声に振り返ると、疲れ切った風のリョクレンが金の入った袋を懐に仕舞いながら店の戸口を出るところだった。  傍らにはなぜかふくれっ面の従者ジャリ。 「今日は為替の決済やら借財の償還期日が重なったので御座いましょうねぇ、もう物凄い人手で何十人と待たされましたのよ。その上、やっと私の順番が来たかと思えば、何処かの宿屋の女将さんが客から代金としてもらった為替がお金に換えられないと解ってもう大騒ぎ、金にしろ、イヤできないで女将さんと手代さんが掴み合いの喧嘩になりそうで!」  話し出せば延々と続くと思いジャモンは「ああ、それは災難でしたな」と適当に相槌を打って言葉を切らせると空かさず。 「宿はどうされます?私の知っている宿でよろしければ案内差し上げますが?」  と切り出した。 「ええ、結構ですわ。私もくたびれ切れましたので、早くお宿に着いて体を休めたいと思っておりました所ですの、何処か素敵なところをご存知ですの?」 「素敵かどうかは存じませんが、まぁ、妙齢のご婦人が泊まれれても不自由は掛けないとは思いますが」  そういいつつジャモンは歩き出す。  皆がそれに続く中、ジャリだけが小走りにジャモンに近づき硬い声で言った。 「調子に乗って高い宿に泊まろうと思うなよ、オッサン」 「コラ!ジャリ!!」と諭すリョクレンを片手で制しジャモンは遥に小さい少年を見下ろし。 「心配すんな小僧、昔から俺の知っている安い商人宿だ。黙って着いて来い」  と言葉を投げ再び足を進めた。
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