女博士『リョクレン』

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 しかし、先に言葉を発したのはリョクレンだった。 「ま、人には色々事情が有るから、あんまり立ち入った事を聞くのも良くないわよね。ごめんなさいね。シンシャちゃん」  彼女の当惑顔に遠慮したのか、胡散臭い物を感じ質問を控えたのか、ともかくシンシャは胸を撫で下ろした。 「それにしても、ジャモン様みたいな頼りになるお連れがいて羨ましいわぁ、ジャリもああ見えて頼りがいは有るには有るんだけど、やっぱり子供は子供でしょ?どこか頼りきれない所があるの、でも父上様が成人した男と一つ部屋で眠る様な旅はさせられん、なんて仰るもんだから、あ、でもジャリが居たことは有り難かったのかも?だって弓の使い手のあの子が居なければ、父上様は旅をおみとめに成らなかったでしょうから、そう考えると、ジャリは私に取って無くてはならない従者って事になるわね、うんそうかそうか」  自分の言葉に独りで納得し、独りで首を縦に振るリョクレンを奇妙な顔で見ながら、シンシャは己の立場に思いを致す。  あの岩室の夜。ジャモンから全てを聞かされ、それでも彼について行くと決めた。  ならば、自分もジャモンの為に成ることをせねばならないのでは無いのか?  日々の暮らしの世話以外に、ジャモンの大望である仇討ちの為に成る何かを……。 「私も、ジャモンさんの為に何かしなきゃ」  思わずそんな言葉が口を突いて出る。 「え?今、何か言った?」  怪訝そうに訊ねるリョクレンの言葉に慌て頭を振るう。  一瞬、不思議そうな顔をしたリョクレンだったが、直ぐに優しい笑みを浮かべ。 「じゃ、お先に上がらせて貰うわね、ゆっくりと暖まりなさいな」 と、言うなり湯船から上がった。  均斉の取れた優美な曲線の全身が、シンシャの前に惜しげなく曝される。  また、俯かねばならなかった。
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