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「多少・・・・・・」と彼女が答えると杯を渡し徳利から並々と白い酒を注ぐ。
「今宵は寒い、少々酒精を入れて休まれると良いでしょう。さあ、遠慮なく召し上がれ」
最初はおずおずと口をつけるリョクレン、しかしはっと目を見開くと一気に杯を開けた。
「まぁ!おいしい!!辛口で喉越しが宜しゅう御座いますね!」
こんど眼を見開いたのはジャモンの方だった。すこし目じりに後悔の皺が現れるが、空の杯を差し出すリョクレンに仕方なく二杯目を注ぐ、そして三杯、四杯と重なる。
平然と酒を味わう彼女を困ったように見ながらジャモンはシンシャにだけ聞こえるように呟いた。
「アテが外れた」
どうも酔い潰してこのままジャリに押し付け、部屋に戻ろうと算段していた様だったが、明らかにしくじった。
「姫様はお酒がお強いんだ。この前の宿場でも酔い潰して姫様をどうにかし様としていた奴らが居たが、てめぇらの方が先にぶっ倒れた」
岩魚の炊き込み飯を椀に山盛りにしながら事も無げに言うジャリ。
二人の会話を知ってか知らぬか、少々目の据わったリョクレンは楽しげに宣言した。
「さぁ、ジャモン様、夜は長ごう御座いますわ、今宵は朝まで妖撃について語りましょうぞ」
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