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そこから出てしばらくすると、先程の黒髪の少女が顔を赤らめたまま急ぎ足で生徒会室から出て行った。
暗闇ではよく分からなかったが、とても可愛らしい顔立ちで。
そう思った瞬間、頭に疑問が浮かび上がった。
あのヒトは、兄貴の彼女なのか?
「……嫌だ」
生まれてからずっと側にいて、兄貴のことを一番よく知っているのは俺だと自負している。
兄貴の食事も、服の洗濯も、部屋の掃除も、何十年とやっているのはこの俺なんだ。
兄貴の才能もちゃんと理解しているのは俺だけ。
兄貴を愛してるのも、全部俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺!!!
たかだか数ヶ月の付き合いの奴に、兄貴をとられるなんて耐えられない!!
「――陽、いるか?」
がちゃり、と資料室の扉が開いて兄貴が顔を覗かせる。
それを見た瞬間に汚い独占欲は消え失せて、自然と笑顔を見せることが出来た。
「いるよ、兄貴」
椅子から立ち上がって、おぼつかない足取りで兄の元へ行く。
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