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「見苦しいものを見せて悪かった。いきなりで驚いただろう?」
半ば倒れこむように抱きついた俺を、兄貴は優しく受け止める。
頭を撫でる暖かい手にうっとりとしながら、××の匂いがまだ僅かにするシャツに顔を埋めた。
「俺は大丈夫だけど……あの人は誰?」
すると、彼は苦笑しながら、俺の背中に腕を回して抱き寄せる。
更に密着する体に戸惑っていると、彼は背中を撫でながら言った。
「ストーカーだよ」
「ストーカー?」
その言葉を復唱すると、彼は頷いた。
「付き纏うのを止めるように言ったら『抱いてくれたら止める』ってきかなくてね」
じゃあ、あの人は兄貴の彼女ではないのか。
ホッと安心するのと同時に、黒い感情もわき上がる。
兄貴に嫌がらせして、その上抱いてだと?なんて図々しい!
いくら顔が良くてもそんな女に価値はない。
……ならいっそ、これ以上兄貴を不快にさせる前に――
「兄貴は、あの人のこと嫌い?」
「ああ、嫌いだよ」
その返事は、俺を動かすに十分だった。
「……俺、ちょっと用事を思い出したから行くね」
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