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――兄貴は、完璧だ。
学生として、勉強、スポーツがただ出来るだけじゃない。
大人なんか相手にならない程大量の知識を持ち、見た目からは考えられないほど行動的。
更に決断力があり、カリスマ性も高くて……
まさに、人の上に立つ為に生まれてきたような人。
「会いたいな……」
ぽつりと呟いた言葉が、誰もいない廊下に虚しく響いた。
のろのろと立ち上がり、再び廊下を歩く。
あの角を曲がれば、すぐに生徒会室が見えるだろう。
早く帰って兄貴に会いたい。
そう思いながら、角を曲がった。
「あ、星さん」
「……陽、くん?」
生徒会室の扉から出てきた少女が、驚いたような顔で此方を見る。
その姿に妙な違和感を感じるが、真っ先に出た疑問を先に聞いた。
「今日って、生徒会の仕事あったけ?」
彼女が生徒会室にいるというのは、とても珍しいことだった。
一応、生徒会書記などという肩書きを持っているが、仕事大抵家でやってくる。
もし会議があったとしても、生徒副会長である空が出席しなければ意味がない。
「私は、ちょっと忘れ物を取りにきただけ」
それより、と彼女は視線を俺の眼から少し下げた。
「その格好、どうしたの?」
「あ? ああ、ちょっと喧嘩に巻き込まれてさ」
……真実なんて、言えるわけがなかった。
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