【第一話━scene3】

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 全世界で行われた、地球温暖化防止策。それは、これまでの《化石燃料》の使用を完全にストップさせ、環境に無害な《元素》の使用を円滑化するものだった。そのため、日本国内で大規模な土地開発が施される。  《東京都・新江戸川区》。  江戸川(旧東京湾)付近にあるアパートのとある一室に少年は住んでいた。  顔の右目尻から口にかけて大きな火傷の後。  逆立つ赤毛。  彼の名は晴嵐耕助(せいらんこうすけ)。  相楽高校(さがら)二年二組に在学中。  額には脂汗がたまり、見るからに苦しそうだ。唸りをあげるのに比例して、汗が吹き出ている。 「はっ!?」  無意識のうちに布団から手を上へと突き出し、空(くう)を掴もうとしたところで少年は目が覚めた。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 「夢、か」  三年。  忌まわしいあの事件から約三年経つ。  気を失った後、俺は近くを通りかかった船に救助されたらしい。  俺以外の乗客は全員死亡。  話によると、俺の背中には旅客機の椅子があり、海上を漂っていたと言う。  あれだけの大怪我を負ったのに、よく生きていたものだと感心する。それと同時に「運が良かった」と。  純粋にそう思ってしまう自分がいた。  生きていることを、素直に喜んでいていいのか? ……自分は、あの時隆介を救えなかった。もしあの時。自分が隆介を掴んでいたら……。  隆介も生きていたかもしれない。
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