53人が本棚に入れています
本棚に追加
本来俺は千葉に住んでいたのだが、紅葉さんの所に住み込むため、《相良高校》に転校してきた。俺の入学前、誰が言いふらしたか知らないが、新世紀の始まりを告げた。あの惨劇の唯一無二の生き残りということが高校中で噂になっていた。
そして高校の入学式直後。三年生が俺にちょっかいを出してきたのだ。
俗に言う《不良》。
「お前があの事故のたった一人の生き残りなんだって?」
不良グループの三人の内一番偉そうな背の高い男が俺を体育館裏なんて言うベタなとこに連れ込み聞いてきやがる。
「だったら何なんですか?」
事実。
極力バレない方が良かったが、バレてしまっては隠す意味がない。俺は考えた事をそのまま口に出していた。
「あんな中で生き抜くなんて、お前悪魔なんじゃねぇのか!?見ろよ!この火傷!!」
俺の火傷を指差して、他の二人を煽る。そんな事を言って馬鹿笑い。堪えがたい怒りが込み上げて、憎しみを増長させていく。
「…………だって?」
「あ?なんつった?」
「誰が悪魔だって!?」
激情に身をまかせ、キレた。自分の《生》そのものが否定された気がしたからだ。俺はその煽った男を右手で力の限り殴った。
「ぐっ!!」
鼻周辺部を抑えながら、体勢を少し傾かせこらえる不良。いい気味だ。
「てめぇ!なにしやがんだ!!」
即座に俺も同様に顔面を殴られる。すぐさま口の中に新鮮な鉄の味が広り、酷い痛みを感じた。
「ハッ!調子乗ってんじゃねぇよ!」
ムカツク。コイツは自分が《神》だとでも思っているのだろうか?勘違いも甚だしい。こういう奴は、一度痛い目にあうといい。
「調子乗ってんのはてめぇだろ!?周りからなんて言われてるかはしらねぇが、図に乗るんじゃねぇ!!」
お返しとばかりに、今度は俺がぶん殴る。
「ギッ!!」
手が紅に染まり、生温かい血が付着するのが見えた。
「だっ、大丈夫ですか!?」
今まで見ていた不良の一人が倒れた奴に声をかけたが。怒り狂ったように、声を荒げて命令をした。
「なに見てやがる!?サッサとコイツ黙らせろ!!」
「は、はひぃ!!」
そんなやり取りがあり、残りの二人も俺を睨みつけ、襲いかかってくる。
「上等だ」
誰の耳にも入ることなく、言葉は風に流される。こいつらはゴミだ。何も遠慮することなんてない。既に、狂気の笑みが理性を支配しているのが、消え行く自我の中でも理解できた。
最初のコメントを投稿しよう!