【第一話━scene3】

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《窮鼠猫を噛む》。 まさに、それがよく似合った状況だったと言える。俺から見ればかなり善戦した方かもしれない。 もうすでに取り巻きの二人は地面に屈し、一番偉そうな奴も息も絶え絶え。……まぁ俺もだが。 様々な箇所を 殴られ、 蹴られて、 全身が痛む。 軋む。 だが、そんな事は気にならねぇ。 ……あのクソ野郎をぶっ飛ばすまでは。 異常な気迫を感じ取ったのか、先程まで若干余裕を持っていた不良が呼吸を乱した。 勿論それを見逃すほど俺はお人好しではなく、すぐさま駆け寄り、その勢いを保ったまま今度は腹に染色された拳を突き出す。 「かっ……は」 後ずさりをするように移動しながら痛みに堪えるのが《滑稽》と思った。ざまぁみろよ。 「この死にぞこないがぁぁぁ!!」 気でも狂ったか。 あいつは後ろのポケットから刃渡りの短いナイフが取り出す。 「動くんじゃねぇ!!これ以上なんかしたらマジでぶっ殺す!!!」 「それがどうした?」 「へっ?」 間抜けな声が漏れる。 やっぱり《滑稽》だと再認識した。 「そんなモンでビビるとでも思ったのか? 生憎、こちとら一度死んだようなもんだ。 んなもん俺の《恐怖》の対象外なんだよ」 一歩一歩を踏みしめ、噛み締め、あいつに近付く。 「あああああああぁ!!」 圧力に堪えきれずに、奴のナイフが肉に食い込み、裂ける音が鳴る。 左腕からまるで炭酸飲料を振って開けた時のように出血した。 「死ね」 俺は消え入りそうな声を発した後、小指から順に握りしめ、拳を力強くかたどり、右頬に拳を埋めた。 自分の腕が完全に伸びきるまで力強く頬にねじ込む。 ……終わった。 やっとそいつは意識を失い、俺は深く呼吸をしたのを今でも鮮明に覚えている。 その時、その光景をみた一人の生徒が赤色の逆毛を持ち、血で真紅に彩られた俺を……。 《赤逆毛》(あかさかげ)と呼んだ。 結局、その事件はナイフで傷つけられた俺は《正当防衛》と言うことで、特に咎められはしなかった。 そして、その連中は近所でも有名な不良達らしく、それを倒した俺は恐怖と畏怖の対象になり、現在に至る。 なるべく人とは関わらないように。そう生きていこうとした俺にとっちゃ、えらく都合がいいがな。image=281449239.jpg
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