【第一話━scene3】

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無気力なまま受けていた退屈な授業は、早くも終わりを告げた。そんな時間も過ぎ去り、生徒たち憩いの場。昼休みになった。 自分の教室で、紅葉さんが作ってくれた昼飯を取るが、自分の周りには人っ子一人居らず、ぽっかりと穴が空いている。ただ何時も独りではなく。たまに大輔と飯を食うが、今日は用事があるとかで早退していった。 隔離された空間を眺めながら、人知れず自嘲気味に微笑んだ。 無理はない。 端からみたら、俺は気の狂った危険人物なのだから。 呆けながらおにぎりを口に運んでいると、不意に話し声が前方から聞こえたので、耳を傾けてみた。 「ねぇねぇ!都市伝説知ってる?」 「最近流行ってるアレ?」 「そうそう!《黒い空》!!」 「わたし内容よく分かんないだよね」 向かい合って食事をとっている女子。その内容がヤケに引っ掛かった。 (黒い空?) 聞き間違いでなければ確かにそう言っていたハズだが……。 「最近不自然な事故とかぁ、大規模な自然災害とか、頻繁に起こってるじゃん?あと未確認生物が目撃されたりとか!!」 事故で人が亡くなってもこいつらには話の話題でしかないのだろうか。つくづく利己的な生き物だな。 「確かにねぇ~」 「でね……そういう類の事が起こると、必ず一瞬空が黒くなるんだって!必ずだよ!?これって凄くない?」 「えぇ~うっそだぁ~」 「ホントだってばぁ!今ネットで持ちきりなんだから」 《黒い空》か。 俺が事件に巻き込まれた時も確かそんなようなものが。 ……ってバカか? 全く、《都市伝説》なんか有り得ないのに、自分の事件と重ねやがって。……責任をその《黒い空》ってやつにでも押し付けるつもりだったのか?俺は? 今度は自分自身が《滑稽》に見え、冷笑する。 事故で人が亡くなっても自分には関係なけりゃ、ただの話題としかとれないやつらと同じじゃないか。 ホンット、俺ってバカ。
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