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(しかし腑に落ちない)
帰り道を真っ直ぐ少し足早に帰って行く。
心の中には昼休み時の会話がまだ残っていた。
なぜだか、あのこと。
《黒い空》が引っかかる。なぜだろう……本当にただの伝説なのか?
いや、そんなモノは存在しない。
だが、俺は確かに見た。漆黒のロボットを。しかし、その存在は確認されなかった……。やはり幻覚だったのかもしれない。
もう一つの意見が出れば、もう一つが反発する。かといって、後者をたてようとすると、前者がしっくりこない。
葛藤、葛藤、葛藤……。
そんな永遠に続くかと思われた議論は、俺の意志とは無関係に終わりを迎えた。
「相良高校二年二組、晴嵐耕助だな?」
声がしたさきには堂々と漆黒のスーツを纏った二人組の男がいた。
いや、現れた。
(どこにいやがったんだ?いつの間に……)
「なんか用か?」
「《用》はありますが……ここではなんですので、ご同行願いたい」
先ほど話しかけてきたスキンヘッドが表情を変えぬまま、口だけを動かして質問に答える。怪しすぎるのもあるが、何よりも嫌な予感がした。
「断る」
「何故?」
即座に言葉を返す。もう何も考えたくない。総てのモノが邪魔にみえる。
「俺にとってメリットが何一つ無いからだ」
それに対し、相手も表情一つ変えずに切り返す。
「何故そう思うのです?」
しつこい奴だ。
「……B型の勘だ」
「そうですか、非常に残念です……では」
そしてひと呼吸置いてから、《宣告》された。
「強行手段をとらせていただきます、かかれ」
「はっ!!」
そう言って手を挙げると、もう一人のスーツを着た男が俺めがけて真っ直ぐに走ってきた。あまりに咄嗟の出来事だったので、身構えることすらままならず、接近を許してしまう。
「しばらくの間眠っていただきます」
「なっ!?んぐっ!!?」
ハンカチを鼻に当てられた途端に意識が朦朧としていき、俺の世界が歪んでいく。何も理解できぬまま、深い眠りへと落ちていく。
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耕助が倒れたのを見て、スキンヘッドは連絡をするため連絡用の機械を口によせ、言葉を連ねた。
「任務成功。これより、本部に帰還する」
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