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やるべき事は状況分析。こんな場所でウジウジしている暇なんか無い。とはいったものの、情報源は目の前にしかいないので、彼と話すことにした。
「……そーやったんか……。ワイも街歩いとったら突然のぉ。なんかようわからんモン嗅がされて気づいたらココや」
とりあえず、なぜ自分達がこの場所に居るかという《ワケ》を地紋と推測してみたが、全くもって兆しが見えない。
そんな中……今までの軽い振動が消え去り、向かい合っていた俺達からみて、左の鉄の裂け目が広がる。眩しい光がこちらに漏れ込んできた。
「突然の事で非常に申し訳ありません……ですが……時間が無いのです」
扉の向こうには、俺を拉致したスキンヘッド。そいつが後ろに四、五人の男を待機させていた。おそらくは部下だろう。こちらの事もお構い無しに、更に話を進めていく。
「ついてきてください。なぜ、あなた方が此処に連れてこられた理由を話しましょう」
「何人も連れて……半分脅しだな」
「そうですね。ですが、時は待ってくれません」
皮肉を込めて俺は言葉を発したが、アイツには意味がないようだ。軽く流される。
「……ほな、行くとするかい。待ってても何もわからんしの」
どうやら地紋哲也とやらは、エラく思考回路が単純らしい。自分達をここに連れて行った張本人を前にしても、何事も無かったようにケロッとしている。
「…………わかった」
しかし、拒否したところで何をされるか判らない。俺も渋々了解し、重い腰を持ち上げた。
「では、こちらへ……」
そう言ってスキンヘッドを先頭に、地紋と俺は周りを囲まれながらも歩き始めた。
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