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西暦二千九十九年。
二十一世紀の“世紀末”に当たる。
人類は多大なる《犠牲》と共に、更なる発展を遂げ、化石燃料に変わるエネルギー源━━━━《元素》を作り出すことに成功する。
《元素》の最大の特徴は、そのエネルギーを使用しても減らない点。まさに無限のエネルギーと呼ぶに値する。
まだまだ、謎が多かったが、人類がこれを使わない手はなかった。そして、元素を実践的に始めて採用した機械が……《旅客機》だった。
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「すっっげぇ~!」
「うん!」
対になるように付けられた白銀の翼を観て、日系人には珍しい。赤毛の俺と弟が二人ではしゃいでいる。
「じゃあ、耕助。隆介。早く私達も乗るとしようか」
「そうね……いきましょう」
自分達の愛の結晶を笑顔で見守っていたのは、赤毛の父さんと黒髪の母さん。
父さんは俺達の肩にその大きな手を乗せて、暖かくさすってくれていた。
感じたのは、もどかしさと、嬉しさと。
「「うん!」」
少々くすぐったさを覚えつつ、笑顔をほころばせながら、我先にと俺達は駆けていった。
俺たちが向かった対象の名は《sky walker》。従来型の四、五倍の貨物等を運搬可能となった、新型の旅客機。
それでいて、安全面も飛躍的に上昇。
まさに《新世紀》に相応しい旅客機だ。
そしてその旅客機を造った《大手メーカー》は、多くの人に性能を実感してもらうべく、搭乗者を抽選で選ぶことにした。
俺達の家族はそれに応募。それが見事に当たり、新型旅客機に搭乗することとなる。
《快適で安全》。
俺の予想を遥かに上回る存在に思わず胸が躍った。当時、まだクソガキだった俺には充分すぎたんだ。
旅客機の目的地は、ハワイ島。そして太平洋上を何事もなく横断する。
「スゴいよ兄ちゃん!ホントに飛んでるんだよ?」
「あったり前だろ!?これは飛行機なんだぜ?」
「アハハハハハ!楽しんでくれてて良かったね、母さん」
「ええ、ホントね」
そんなとりとめない会話を小耳にはさんでいた俺は、確かに幸せを感じていた。
しかし……。
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