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突然、俺が見渡せる全ての世界が情報を途絶させた。
……何も見えねぇ。
重く。
鈍く。
空気を裂く音が辺りに鳴り響き、ザワザワと音を立てながら機内が慌てふためいた。
「何なんだ?」
機内の乗客全ての脳内には、この疑問点が浮かんだに違いない。
事実、俺達晴嵐一家は脅えていた。
「……大丈夫。大丈夫だからな」
アテのない父さんの言葉。しかし、それにしか縋ることが出来ぬ自分。
俺はこの時、冷や汗に全身を蝕まれた。悪い予感がしてならなかったのだ。
太陽光が照り返る遥か上空が、得体の知れぬ《黒》に支配されていく。
見えない《壁》。
見えない《檻》。
自分勝手な人達は、何が起きたのかと。自分達の保身を優先している。
それが当たり前なのだと。醜い人間なのだと。俺は、その時理解したのかもしれない。
そして……。
俺の勘は当たってしまったのだ。
想像を超越して。
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