【第一話━scene2】

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「ああぁぁあぁあぁあぁぁ!!!」  叫んだところで何も変わらない。変われるはずもない。わかっているが……。心の何処かで期待してる自分がいた。死を待っているのが恐い。たまらなく怖かった。  その時、俺は見た。信じられぬ光景を。 「━━━━」  言葉を失った目線の先には、鈍く光る黒い機械。右手には、先程旅客機を切り裂いたであろう、銀色に輝く剣。別段目立った装飾はない。ただシンプルな分、とても力強く見えた。  なんなんだ?  なぜあんなに大きい?  それだけの質量を持った剣だ。触れた乗客達が肉片へと変わり、辺りを真っ赤に彩るのは、至極当然の事であった。  言うなれば━━そう。  そいつは。  空想の産物であると思っていた。  人型のマシンだった。  呆けていると、突然鈍い衝撃が頭に伝わる。それは生半可なものではなく、鈍い音と共に視界が一気にブレて、同時に激しく吐血した。 「グボッ!」  虚ろで力尽きている眼には、血の付いた塊が入ってきた。どうやら俺の後頭部に金属片がぶち当たったようだ。  視界どころか、意識もぼやけて、今ではまともに物を視ることさえ出来なくなっていた。 (く……そ)  意識が遠のいていく━━。  消えそうな命の灯。  しかし、突然意識は覚醒する。  ここから少し距離を置いたところに、見慣れた。自分とよく似た赤毛の少年が、頭を下にして、真っ逆さまに墜ちていく姿だったからだ。 「りゅ………す」  最後まで兄弟の名前を言うことすら叶わず、ただただ右手を伸ばす。だが、絶対的な距離は、一向に縮まることはなかった。  弟に触れることすら不可能を悟った俺。今度こそ、終わったのだ。  朧気(おぼろげ)な瞳は黒いマシンを見つめていたが、やがてそれを拒否するかのように瞼は堅く閉じられ……。  気絶した。
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