堕ちたHERO

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ある日、彼のお陰だろうか。 悪と呼ばれる事がぱったりとなくなった。   悪い事をしても彼がくるからだ。   人々から、彼を呼ぶ声もなくなった。   平和になったのだ、と彼は喜び、満足していた。     彼は、翔び続けた羽を休めようと街に降りた。   何度も彼を呼んだ街。 馴染みのような人々のいる街に。   しかし、誰も彼と話をしようとしない。 彼の姿を見ると、皆足早に去ってしまう。   彼は翔び立った。 そして、他の街にも行ってみた。   しかしどこも同じ反応だった。     そう、平和になると誰も彼を必要としなくなったのだ。   むしろ、『自分とは違う』と、怖がり、嫌い、誰も彼を求めなかった。     しかし彼は翔び続けた。 まだ彼を必要と、いや、『人間』として接してくれる人がどこかにいると信じて。   幾日も幾日も休むことなく翔び続けた。 人を見つけては話しかける。 その度に怖がられ、逃げられる。 それの繰り返しだった。 それでも彼は翔び続けた。     幾度かの月が昇った夜。 とうとう彼は地に堕ちた。   身体が疲れたのではない。 心が、精神が悲鳴をあげた。   彼は地に堕ち、誰もいない森の中で、ただひっそりと、人知れず土になった…。      
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