遥か彼方のわすれもの

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お風呂から出ると、脱衣場には着替えとバスタオルが用意されていた。 身体を拭いて、頭を拭いて髪に軽く手櫛を通すと、用意された服を手に取った。 「大丈夫か?のぼせてるんじゃ……」 「きゃあぁあぁあッ!」 「わッ!悪いッ!!」 慌ててドアを閉める草薙さん。 見られた……ッ! 間違いなく見られたッ! だって咄嗟に草薙さんに背を向けたけど、目の前には大きな洗面台に大きな鏡が……。 でも長風呂してた私も悪いよね……。 私はとりあえず借りたTシャツとハーフパンツに着替え、意を決して浴室を出た。 その瞬間バチッと目が合う。 「お風呂ありがとうございました」 お礼を言う振りをして視線を逸らす。 「ああ……飲むか?」 そう言って草薙さんはミネラルウォーターのペットボトルを差し出す。 「ありがとうございます」 受け取る為に草薙さんに近づくと、草薙さんは一瞬私を凝視し、自分の着ていたパーカーを脱いで私に掛けた。 今はお風呂上がりだから寒くないんだけどな。 掛けるなら寧ろ車の中で掛けて欲しかった。 そんな事を考えながら向かいのソファーに遠慮なく腰掛け、ペットボトルの蓋を開けて気付いた。 薄手のTシャツだから透けてる……。 だからパーカー着せてくれたんだ……。
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