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頭の中で『ぶつかる!』と思った瞬間、想定していた衝撃や痛みが無いことに違和感を覚えた。
まるで、障子を突き破ったような感覚と言えば分かるだろうか?
信じられない事だが、どうやら身体全てがすっぽりと石の内部に入ってしまったらしい。
無事着地はしたものの、何が起こったのか理解出来ないままだ。
辺りを見回してみるが、霧のようなものがかかっているせいか、よく見えない。
「ここはどこだ? やっぱり夢か?」
「だから夢じゃないってば」
背後から声が聞こえ、驚いて振り向くと……。
「やっほー」
俺をここへ押し入れた女の子が笑顔で立っていた。
「うわっ! いつの間に?」
「今さっき」
「どうやって?」
「ここは出入り口なの。この場所が外と繋がってるんだよ」
なるほど……仕組みは分かった。
やはり、ここは石の中ということで間違いないらしい。非現実的だが、一先ず現状を受け入れるとしよう。
驚いてばかりいては疲れてしまうからな。
そう自分を納得させた後、心の奥から湧き上がってきた感情があった。
「さて……さっきはよくもやってくれたなぁ?」
「へ? なんのこと? 何で怖い顔なの?」
「さっき俺を突き飛ばしただろ! それに、俺をこんな訳の分からない所に連れ込みやがって」
「いや~ん。言い方がちょっといやらし~」
金髪女は両手を頬に当ててわざとらしく呟く。
「とにかく! ちゃんと責任を取って貰わないとなぁ?」
俺の言った責任云々というのは『早くここから出しやがれ!』という意味だったのだが……。
「せ、責任!? えっ、えーと、いきなり過ぎるよ……まだお互いの事よく知らないし……。けど、このまま付き合って……結婚して……うへへ~」
どうやら誤解したようだ。
しかも飛躍した妄想を口から垂れ流しにして一人勝手に舞い上がっている。
身をよじらせている少女を見て、ついつい溜息がこぼれた。
「あんたさ、他の人から『変な奴』って言われるだろ?」
「なっ! 言われないよ! ただ『変わってるね』って言われるだけだもん!」
「……」
どっちも意味は同じだろう。
こちらの気持ちが伝わらない会話の中、何やらお気に召さない表情で見つめてくる。
「それよりも! さっきから、あたしのこと『お前』とか『あんた』って呼んでるけど、それ好きじゃないの」
「お前はお前であってお前でしかない」
「むぅ! 意地悪!」
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