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それはまるで瞬間移動。
私が不審に眉間の皺を寄せると、女はお構いなく淫らに溢れる豊満な胸を押し付ける。
射抜くように睨む上目遣い。戸惑いを隠せない私を見つめながら、艶のある声で冷めた言葉を呟いた。
「まだ分からないなんて、本当に間抜けな男ね」
――え?
すると再び人が変わったように、とろけるような甘い淫らな声。
「アタシの胸を見てよ。あ、うずめてもいいわよぅ」
──いや、無理です。
既に警戒心を露わに私は思わず視線を反らした。壁にメリ込むのではないかと思う程後ずさる。
が、一瞬の間を置き、女の態度がまた豹変した。
「アンタさぁ、永ぁーく生き過ぎて色忘れたの?」
──へっ!?
その豹変ぶりと、私には意味が汲み取れない事に目を見張ると、女は呆れ返るようにトンと私の胸を叩いた反動で身を離す。
距離ができた事で一瞬ホッとしたが、未だ女の言葉と態度に私は首を傾げたまま。
「えと、な……何を、言ってるんでしょうか?」
どうにも戸惑ってしまう自分を隠せなかった。そこで初めて女は吹き出した。
「プッ、ふふふ。バーカ」
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