記憶の行き倒れ

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 今の時点で既に、性格的要素から見ても相反する泣きボクロが印象的な彼女は、妙に深刻な表情を浮かべて問う。 「まさかアンタ、<千年の刑>も覚えてないとか?」  暫くの思考が、私の脳内を駆け回る。ぐるぐるぐるぐると、無駄に永い時の中で数少ない記憶。 「えっと……それ、私はレンに言いましたっけ?」 「言ったわよ! まあ、理由までは詳しく知らないけどさ。ただ、もうそろそろ……その時期、よね。だからアタシ、ずっとここでシンを待ってた」  待ってた、という言葉に一瞬首を捻る。  その辺りはよく意味が分からないのですが……まずは一言。 「ほお、そうでしたか。ご苦労様です」  ひとまず私は丁重に素直に思った事を言っただけなのだが、彼女はそれを許してくれないようで。 「ヒ、ヒェン!? い、いひゃいへふひょっっ!」 「どの口が言ったぁ──っ!! あぁあ゙あ゙っ? この薄っぺらい口かあぁあ──っ!?」  唇が裂けるかもしれないと思った。いや本当に。おかげで頬をツネられながら横に引っ張られた私の口からは、もう、ごめんなさいしか出てこないです。  やっと手を離してくれたものの、頬と口端はヒリヒリです。どうしてこんな目に合うのやら……。 「アンタいくらなんでも……ああ、ったくぅ。まさか本当に全部忘れちゃったの!?」  
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