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「忘れたって、何をです? レンの事は思いだ、いや覚えてますよ?」
私はまだヒリヒリしている頬を摩りながら、行き着かない疑問の答えを探しあぐねる。
――何故、この人はこんなに必死なのか。
理解できない。でもまたそれを言うと、今度は何されるか恐いので、やはりお口にチャックですね。
やがて彼女は呼吸を整えるように胸に手をあて、何やら覚悟を決めたかのような面持ちで私を睨み据え再び口を開いた。
「いい? ここは、いやこの街は、アンタが昔居た街なの。だけど……えと、つまり帰ってきたのよ!」
「……はぁ……そう、ですねぇ」
もっと何か重大な事を言うのかと内心期待した私が愚かでしたね。
結局彼女が何を言いたいのか未だ理解不可能です。
呆けていたであろう私の表情を確認するや否や、彼女は一気に顔を上気させ唾を飛ばしながら身を乗り出して怒鳴り散らした。
「っだ、だからっ! あの魔道士達にかけられた呪いみたいなのが発動してんのっ! アンタがあちこち行ってこっち帰ってきたけど、帰ってきちゃいけなかったのっ!!」
「……あのぅ。なんか分かりませんが、帰ってきてすみません」
抜け落ちた記憶があるのでしょうか。取り敢えず私には、それしか言えなかった。
はあぁ、参りましたねぇ。未だ全く意味合いが分かりません。
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