記憶の行き倒れ

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 頭の中が真っ白になりそうな私に、彼女は胸を飾る紅い石を示して言葉を続けた。 「信は、今のアンタを導く手段として、この石に力を与えてアタシに託したんだよ。まだ意識がハッキリしてる自分の一部を、私の口を借りて話させる為のパイプ役としてね」  ──まだ思い出せない?  と、切なく問う深緑の潤んだ瞳に、まだ記憶が整理できていない私の姿が映る。  石の意味は大体分かった。が、もう一人の自分? 三つの呪?  脳裏に駆け巡る記憶の道。  確かに<千年の刑>も彼女の事も覚えている。  だが何かが、抜け落ちている。それが一体何なのかなど、探る事も考える事もなかった。  今までは。  何故なら──考えようとすると、その度に睡魔に襲われていたから。  今なら、今記憶の封印を解く鍵が目の前にいるこの瞬間ならもしかして大丈夫かもしれない。  そう思いながらも、睡魔への不安を払拭するように私は端的な質問をした。 「あの……もう一人の私、とは?」  
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