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「成る程。やはり路銀を稼ぐにはいい所ですね。街の活気は気分も高揚させます」
私は誰にでもなく涼やかに呟く。賑わう街の色が平和な雰囲気を醸すと同時に、心も踊る。
断続的? それとも断片的といえばいいのか分からないが、私には僅かな記憶の一部分はある。
そう、今まで私が目にする所はみな様々な災いが必ずといっていい程起きていた。
自然災害は人間の無力さを痛感させ、いつの時代も絶えない人間同士の争いは、根底にある心の強さを垣間見る。
ある国では荘厳な古代建造物が街の香りよい一部となっていた。が、いかんせんその国境いで戦火が上がった時、無惨な瓦礫に朽ち果てるのを横目にして、私はその被害から身を守る為に精一杯逃げた。
そう、逃げる事しか出来なかったのだ。妖魔といえど、たいした力なんてない。
ただ、無情にも、“永く生きてるだけ――”。
とはいえやはりケガは痛い。私は皮肉にも妖魔なのに非力な存在。時には私の存在価値を疑う事もある。かといって応えてくれる者はいない。
いやいたかもしれない。だが次に目覚めた時には記憶のカケラは失われている。
「分かってる事は、東洋に吹く風が合ってるというぐらいですね。時代の流れと共に身を委ねるしかないのは、虚しいものです」
今は暖かい気候のせいか、夜だというのに街並みや人々を見ていると、私のような綿の二枚布で軽装というのが目に入る。
雑多な市場が入り交じり、喧騒だつ人の群れがある意味、祭りのように華やかだ。
人混みの奥に足を踏み入れるごとに、自然と頬が緩む。まるで孤独を癒すように──温かな体温を感じながら私は思う。
嗚呼、私は人が好きだ――と。
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