序章

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「おおっ! けどコイツはちぃっと高けぇぜ?」 「構わないわよ! んじゃ一泊で、ねっ。決まりぃーっ!」  え、ち、ちょっと……私に選択の余地は!?  もしや、ないのですかっ!?  ──うわわあぁっ!!  素晴らしく手慣れた勝手な早いやり取りに、蒼白した私が口を挟む余裕等ある筈も無く、既に夜闇となった街の明かりに映える濃い化粧女に強く腕を引っ張られた。  女の長くうねる髪が、私の前で左右に揺れる。当然、私は抵抗する術も無いまま更に奥へと人混みに揉まれていった。  ――って、ありえないでしょう!! これってもしや人身売買ですかぁーっ!?  な、なんて街なんだ──っ!!  遠くから中年男性の声が響く。 「毎度ありぃ――っ」  何故急ぐのか、人混みに揉まれながら女は振り向きもせず小走りに引っ張り、その間すれ違う人に私の僅かな手荷物はスラれ、長くなった青い髪を一つに束ねていた銀の髪留めもスラれ……。 「って、ちょっと待ってくださぁ──いっっ!!」  
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